歯科医師に必要なバランス感覚
- Takahiro Watanabe
- 5月25日
- 読了時間: 4分
これまで20年間200人近い先生にお会いしてきました。
ものすごく売り上げを上げる先生、非常に頭のいい先生、治療に定評のある先生、とても患者さん想いの優しい先生、コミュニケーション能力の高い先生、お話しが上手な先生、いろいろな個性のある先生方にお会いしてきました。
その中で常々感じることは、バランス感覚が重要であるということでした。
どこかで勤務するにしても、開業するにしても、先生方が常に意識しなければいけないバランス感覚についてお話ししてみたいと思います。
歯科医師という職業は医療に従事することから公共の福祉に資することが根本にあります。
しかしながら医療と言えども利益を出さなければ自分の生活が成り立ちませんし、給与が出ません。
医療として公共の福祉を重んじながら、利益を出し生活を維持しなければいけないというところに、ある種の矛盾が生じていきます。
公共の福祉を重要視すると患者ファーストとなり、患者にとっては親切で心のある治療になりますが、利益は圧迫されます。
利益を追求すると、少ない時間で多くの患者さんを見なければならなくなり、治療の質は低下します。
公共の福祉を重要視すると利益が出にくくなります。
利益を追求しすぎると医療と言う側面がおろそかになっていきます。
この矛盾をどのようにバランスをとって考えるのかということが重要です。
一緒に働いた先生の中に患者ファーストを貫く先生がいらっしゃいました。
クリニックには先生のファンになった患者さんが多く来院していました。
しかし、患者が多いにもかかわらず売り上げは低迷し毎月赤字、結局先生は黒字にすることができずに退職していきました。
逆のパターンもあります。
毎月売り上げは常に黒字。他の先生の1.5倍以上の売り上げを上げている先生がいました。
コミュニケーション力が高いため来院患者は多くいましたが、反面治療はと言うと、補綴は脱離が多く、根治も中途半端、インプラントも脱落を繰り返す。意味なくフラップをし、ワイヤー矯正も失敗して認定医にパス。
売上は高いけど、医療なのかどうか・・・。他の先生がフォローしたりしてるけど、結局相対的に考えたら赤字なのでは?と感じていました。
この二つは両極端な事例ではありますが、バランスが大切だということをよく表しています。
医療と経営のバランスは4:6が最適解だと思います。
最高でも3:7が限度です。
これ以上医療の質を下げるとさまざまなトラブルが発生してきます。
個人医院であれば先生自身が常に意識していくことが大切です。
法人であれば稼ぐ先生と治療を大切にする先生のバランスとして考えることが大切です。
法人の中で稼ぐ先生と治療を大切にする先生という役割分担を作るなら、それぞれが自分の役割を行いつつ、双方に対して感謝できる環境を作ることを忘れてはいけません。
医院運営をしていくには数字の感覚をしっかり意識してください。
保険治療ではやれることが限られています。
時間を使ってやればやるだけ利益が減ります。
患者に親身になるのはいいですが、ある程度のところで線引きをして、これ以上であれば自費で対応するということを考えておかなければ、際限がなく、すべてを保険で対応するしかないことになってしまいます。 混合診療にならないようにしっかりした線引きが必要です。
また、保険治療では不正請求はしてはいけないのは当然ですが、やったことを遠慮なくしっかり算定する、絶対に取りこぼしはしないという意識も大切です。
医院運営が継続していくということは、最終的に地域の医療に貢献することになります。
先生を信頼して自費治療を選んでくれる方に時間を使うようにした方が、より安定した医院運営につながることになります。
自費と保険のバランスを考えるということも、意識すべき重要なポイントだと言えます。
コメント